Steal Away – Robbie Dupree｜夜のすきまに、ふたりだけで。

Gentle Waves の波へ戻る

≋ Gentle Waves no.6 ≋

・Prelude｜秘密がはじまる、音。
・Drift｜夜のすきまに、ふたりだけで。
・Coda｜あの夜は、まだ終わらない。

Prelude｜秘密がはじまる、音。

はじめてこの曲を聴いた夜のことを、まだ覚えている。

イントロが鳴った瞬間、なぜか胸がざわついた。

ドキドキに似ている。でもそれだけじゃない。
もうすぐなにかが始まる、そんな予感。
それがまるで、“秘密の合図”のようで。

ピアノが、ゆっくりと気持ちを引き上げていくたび、
呼吸まで音に合わせて深くなっていった。

恋じゃないかもしれない。
でも、このイントロにだけは、たしかに恋をしてしまったと思う。

Drift｜夜のすきまに、二人だけで。

この曲を聴くと、思い出す。
夜のすきまに、そっと抜け出したくなるような、あの気持ちを。

明るすぎない照明。
街がほんのり湿った空気をまとい始める、初夏の夜。

ふたりだけで、どこか遠くへ行ける気がした。
でも、遠くへ行く必要なんてなかった。

ただ、この瞬間に身をゆだねるだけでよかった。
ピアノが小さくきらめいて、ベースが心地よく寄り添って。

気づけば肩の力も抜けて、それでも胸の高鳴りは続いていた。
言葉はほとんど交わさなくても、音がすべてを埋めてくれる。

そんな夜だった。

Coda｜あの夜は、まだ終わらない。

この曲は今も、夜のすきまに入りこんでくる。

少し大胆で、少しやさしくて。
都会のにぎわいからほんの少しだけ離れた、あの感じ。

きっと、ほんの少し現実からはぐれたかっただけ。
──たぶん、誰だって、そんな夜がある。

せめてこのイントロにだけは、いつまでも恋していたい。
──そんな気持ちがある限り、あの夜は、まだ終わらない。

---

🎧 1980年。
夜のラジオから、こっそり抜け出したような一曲。