Yah Mo B There – James Ingram|音の奥に灯る、祈りのかたち

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≋ Gentle Waves no.14 ≋

Yah Mo B There – James Ingram & Michael McDonald

Prelude|都市の匂いに、やわらかな祈りが混ざる
Linger|響き合う声のなかに、信じる理由が生まれる
Coda|光は、信じる心とともに歩く

Prelude|都市の匂いに、やわらかな祈りが混ざる

この曲は、何気なく手にしたMichael McDonaldのアルバムに入っていた。

正直、最初は少し、自分の好みとはちがうかもしれないと思ったけれど、
ソウルやR&Bの中にも、AORに通じるようななめらかさや洗練が感じられて、
それに惹かれたのかもしれない。

初めて聴いたとき、そのクールで都会的なイントロに、ただ「かっこいいな」と思った。
何について歌っているのかは、よく分からないまま聴いていたけれど——
あとになって、「Yah=神」と知って、少し驚いた。

でも、不思議と違和感はなかった。
きっと、その音はすでに、心のどこかで“信じる”という感覚に触れていたのだと思う。

洗練されたサウンド。都会的で軽やかなリズム。
ソウルフルでやわらかな二人の声。
厳しさではなく、包むような“祈り”の温度感。

自分の中にある「祈り」のイメージ――
静かで厳かで、教会の中に差す朝の光のような――とは、まるで違っていた。

……でも、あとになって聴き返したとき、
その音の奥にふわりとぬくもりのようなものを感じた。

そこにあったのは、声高に語られる信仰ではなく、
もっと日常に寄り添う、やわらかな「信じる」形だった。

Linger|響き合う声のなかに、信じる理由が生まれる

思い出すのは、留学していたときに友人に連れて行ってもらった、あの教会。
厳かというよりむしろ、あたたかくて、エネルギーに満ちていた。

みんなが肩をゆらしながら歌い、手を取り合い、いきいきとしていた。
礼拝の言葉よりも、歌の時間のほうが、心に深く残っている気がする。

誰かが誰かを信じている——
そんなやわらかな空気が、あの日の私の心にそっと触れた。

私はあの場所で、
「信じること」がほんの少しだけ、わかった気がした。

それは何かを強く信仰することではなく、
誰かと一緒に“信じてみよう”と思うことだった。

だからなのか、あとで「Yah Mo B There」をもう一度聴いたとき、
最初とはまったく違うように聴こえた。

クールな音も、軽やかなリズムも、
その奥にある“ともにある”という繰り返しも、
あの教会のぬくもりと重なって聴こえた。

ゴスペルというと、つい『天使にラブソングを』のような、
明るくて高揚感のある音楽を思い浮かべてしまう。
手拍子とともに歌う、あの熱気。

でも「Yah Mo B There」は、そんな賑やかさとは違っていた。
誰かの熱量で動くのではなく、ただ“そこにある”という静かな確かさ。
それが、私には“祈り”のように感じられた。

祈りとは、誰かと一緒にあることなのかもしれない。
声を合わせて歌うこと、寄り添う気持ちが、
自然と“信じる”という形になるのかもしれない。

この曲には、「信じる」という言葉は出てこない。
でも、“call His name”とか、“count on it”とか――
そんなさりげないフレーズが、言葉にせずとも信じるという行為を、そっと示している

それは、確かな証拠でも、正しさを保証するものでもない。
ただ、「そうであってほしい」と願う気持ちと、
その気持ちに寄り添うような静けさ。

“信じる”という行為は、確信ではなく、選ぶことに近いのかもしれない。
“きっと、そばにいる”と願うこと。
“いてくれると信じたい”と想うこと。

そんな小さな祈りのような気持ちが、
私たちの明日をそっと支えてくれるのかもしれない。

Coda|光は、信じる心とともに歩く

「信じる」とは、心の奥に灯る、静かなひかり。
でもそれは、一人で抱えるものじゃなくて、
ときに音楽を通して、誰かとそっと分かち合えるものかもしれない。

信じることは、
「そうであってほしい」と願う、静かな勇気。

その気持ちがあるかぎり、
きっと、明日も歩いていける。


🎧 1983年。
静かな“信じる”が、そっと光を灯す。
声が重なるたび、それは祈りに変わっていく――。

Yah Mo B There – James Ingram & Michael McDonald

・Album: “It’s Your Night”
・Genre: AOR, R&B, Synth-pop
・Memo: 信じる力がテーマのデュエット。Quincy Jonesがプロデュースし、グラミー賞も受賞。

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