How Much I Feel – Ambrosia|それでも、想いは届かない
≋ Gentle Waves no.13 ≋
前にも『Biggest Part of Me』について書いたAmbrosia。
この『How Much I Feel』では、また違った揺らぎが心に残りました。
・Prelude|届かないことば、尽きない想い
・Drift|“やさしさ”のなかにある痛み
・Coda|“愛している”の、その先へ
Prelude|届かないことば、尽きない想い
誰かを想っても、想うだけでは届かないときがある。
伝える術すべを失うと、想いは静かに内側に溜まっていく。
それでも、「想うこと」は止まらない。
——そんなときに、この曲を聴いた。
ものすごく悲しい曲ではないのに、
ハーモニーやメロディがふと胸を締めつける。
前から知っていたような、どこか懐かしい感じもある。
タイトルだけを見れば、たしかにラブソング。
もしかしたら、届かない想いを歌っているのかもしれない。
だけど、この穏やかな感じはなんだろう……
その穏やかさに何があるのか、知りたくなって。
気づけば何度もくり返し聴いていた。
Drift|“やさしさ”のなかにある痛み
ハーモニーは包み込むようで、決して強く主張しない。
メロディはなめらかで美しく、でもふとした瞬間に胸の奥に入り込んでくる。
なによりも、心を奪われたのは――
David Packの、感情の全部を受け止めてくれるようなやさしい声。
やさしいからこそ、癒しと痛みが同時にくる。
気づけばじわっと感情がにじんでくるような感触がある。
まるで、やさしく抱きしめられたあとに、
そのぬくもりが、ふっと消えてしまったような——。
サビを聴いたとき、自然と涙があふれた。
“Well, just give me the sign and I will be gone / That’s how much I feel”
「君が合図をくれれば、僕は去るよ。それほど君のことを想っているんだ」
本当はずっとそばにいたいけど、
その気持ちを心の中にしまい込んで、相手の意志を尊重しようとする――
さわやかで温かい曲なのに、どこか淡々とした語り。
それがよけいにリアルで、静かな悲しみが心に響いてくる。
Coda|“愛している”の、その先へ
「愛している」では伝えきれない気持ちがある。
言葉ではなく、残ってしまった感情そのものが愛の続きだったのかもしれない。
自分にも、そういう想いがあった。
終わったのに、終わりきっていない何かがあった。
この曲を聴くと、
あのとき言えなかった想いが、そっとよみがえる。
それはもう、後悔ではない。
——あの時間が確かにあったという、静かな証のようなもの。
想いが残っていること自体が、音楽と通じ合うような気がした。
「届かなくても、想うことに意味がある」
——そんなふうに思えたのは、この曲のおかげかもしれない。
「忘れようとしても忘れられない」あの曲とは違って、
今回は「忘れたくないから、残しておきたい」。
そんな想いが残った。
この想いがどこにも届かなくても、
それでも想っていたことは、たしかに自分の中に残っている。
いま綴っているこの言葉たちも、きっと、届かない想いのひとつなんだろう。
そして今日も、
自分の中の静かな想いとともに、この音を聴いている。
胸の奥ではまだふくらみ続けてる想いがある。
言葉にできなくても、
音だけがその深さをちゃんと伝えてくれる気がした。
🎧 1978年。
残されたのは、声と旋律と、消えない余韻。
やさしさだけが、最後までそこにあった。
♫ How Much I Feel – Ambrosia
・Year: 1978
・Album: “Life Beyond L.A.”
・Genre: AOR, Soft rock